アダルト動画
昨晩もアダルト動画を鑑賞しながら一人土鍋をつついたものだ。
父が残したこの日本家屋。畳の上にちゃぶ台があり、そのちゃぶ台の大半を占める我が愛しのデスクトップ型パソコンのパソちゃん。
彼女が映し出す毎度まいどの魅惑の女性たちの痴態を肴に、わたしは一人晩酌タイムに興じるのだ。
母親の顔は思い出せない。早々に父に愛想を尽かした。
その時確信した。間違いなくわたしは父の血を引いているのだと。
一人の土鍋ほど美味なるものはない。
今夜も上司から飲みの誘いが入った。わたしは定年間近の顔面へ正拳突きを放つ。
寸止めであろうとその拳速は凄まじく、上司の顔の皮膚は風圧に負け後ろへと逃げていく。そうして後方の壁にめり込んだヅラを何とか掘り起こそうと思案するそのよれた背広姿を尻目にわたしは帰路へと着く。
飲み会などに顔を出す暇などない。わたしにはアダルト動画鑑賞という使命があるからだ。
道中、白い子犬がクンクンと弱々しい鳴き声を上げていた。捨て犬らしい。知ったことか。わたしにはアダルト動画しかないのだ。
行き過ぎのお巡りさんがわたしを一瞥後、そうして何事も無かったかのように彼方へと去っていく。
職質されるような輩とは、たいてい見るからに怪しい奴と相場が決まっている。
目的が無かったり、また不純であったりする畜生の姿勢とはどうにも猫背であり、その歩幅も明瞭とはいえぬものだ。
だがわたしは違う。背筋は伸び足早に、目はランランと輝いて、一心不乱に家路につこうとしている。
職務質問など受けるいわれはどこにもない。
願いはただ一つ、アダルト動画の鑑賞、それのみなのだから。